マクロン大統領が「怒りと恥を感じる」と演説、フランス各地の抗議デモは暴動に
2026年10月19日 06:25
フランスのマクロン大統領は 18 日夜、生活費の高騰などに抗議する前日のデモが各地で暴動と略奪に発展したことを受けてエリゼ宮から国民に向けて演説し、「今夜、私たちは皆、怒りと恥を感じている」と語った [2]。内務省が同じ夜にまとめた集計では、17 日に拘束された人は 2397 人にのぼり、警察官と憲兵の負傷者は 997 人、うち 7 人が重傷を負っている [2]。
17 日の抗議行動は、学校の荒廃や教員の不足を訴えて 9 月下旬に始まった高校生の学校封鎖に、労働組合や「黄色いベスト」運動などが合流したもので、参加者は内務省の集計で 55 万人、労働総同盟(CGT)の発表で 80 万人に達した [6][7]。多くの行進が平穏に進んだ一方、覆面の集団がパリやマルセイユ、リールで商店を襲い、中部のリモージュでは 19 世紀に建った市庁舎が放火されて時計塔と屋根が崩れ落ちた [4][5]。マルセイユでは市庁舎と警察署に集団がなだれ込み、リヨンでは中心部の観光案内所が燃やされ、商業の団体によると荒らされた店舗や事業所は 1500 を超える [1][5][6]。
リモージュのギヨーム・ゲラン市長は、市の警察官が午後 3 時半ごろには弾薬を使い果たして暴徒を止められなくなったと明かし、これを「国家の途方もない失敗」と呼んだ [5]。同市では 18 日夕方、市の推計で 7000 人が焼けた市庁舎へ向かう行進のために集まっている [8]。パリでは 18 日も、交流サイトでの呼びかけに応じてレピュブリック広場に集まった数百人に警官隊が催涙弾などを放ち、42 人を拘束した [1]。暴徒鎮圧用の手りゅう弾でサンテティエンヌの 17 歳の少年が右手を失い、ミュルーズでは 17 歳の少女が片目を失っている [1][5]。
演説は 8 分 40 秒に及び、マクロン氏は暴力を振るった者を「極左の小集団から出た扇動者と、そこに加わった多くの犯罪者」と呼んで、「正当な要求」を掲げて行進した人々と決して混同してはならないと強調した [2][3]。「何ものもこれを正当化せず、説明もせず、許しもしない」と述べ、法相が検察に最も厳しい姿勢で臨むよう求めたことを明らかにしたうえで、「壊した者は償い、奪った者は弁済しなければならない」と言い切っている [2][3]。政府が任命する各県の知事が必要に応じて一部の集会を禁じられるようにする一方、非常事態の宣言や外出禁止令には踏み込まなかった [1][2]。
警備の態勢をめぐっては左右の政治家から批判が相次ぎ、ヌニェス内相の辞任を求める声も上がる [5]。マクロン氏は情報収集と事態の予測について内相に「あらゆる教訓を引き出す」よう指示して「明確な答え」を求め、ルコルニュ首相は 19 日に閣僚による危機対策の会合を開いて、被害を受けた商店への支援や保険の扱い、加害者の訴追を話し合う [3][6]。
演説の後半でマクロン氏は、9 月半ばから高校や大学の若者が「深い不安」を訴えていると認め、生徒や学生、教員、労使の団体、自治体が集まって解決策を組み立てる場をルコルニュ首相が近く設けると表明した [3]。政府はすでに代わりの教員を 3000 人増やすと決め、一部の大学の登録料の引き上げも取りやめている [7]。
私たちは若者に、答えを組み立て、話し合いの席に着く機会を与えないまま、未来を信じるよう求めることはできない。
RFI(«Honte et colère»: après les violences du 17 octobre en France, Macron promet fermeté et dialogue)
ガーディアンによると、米国の爆撃でホルムズ海峡が事実上閉ざされてから燃料の価格が上がり、生活費の高騰に不満を抱く市民が高校生の行進に加わっていった [7]。マクロン氏は演説で、2 月にイランでの戦争が始まって以来、燃料とガスを確保するために各国に働きかけてきたと説明し、19 日朝から湾岸諸国を回って調達を固めると述べている [3]。
大統領選挙を半年後に控え、演説のあとも政府の対応を擁護する政治家はほとんどいなかった [2][6]。極右・国民連合のルペン氏は政権が「息切れし、疲れ果て、方向を見失っている」と批判し、急進左派「不服従のフランス」のメランション氏は、国がいずれ制御できなくなる事態へ向かいかねないと警告した [1]。マクロン氏は、国の将来をめぐる議論は「街頭で暴力によってではなく、公の集会で政党とともに」行うべきだと訴えている [3]。米国のトランプ大統領は SNS に「フランスが燃えている」と投稿し、暴動の原因は移民にあるとの見方を示した [1]。
参考文献
- [1]France 24(Macron says 'nothing justifies' violence in protests during address to nation)
- [2]RFI(«Honte et colère»: après les violences du 17 octobre en France, Macron promet fermeté et dialogue)
- [3]franceinfo("Rien ne le justifie, rien ne l'explique, rien ne l'excuse" : ce qu'il faut retenir de l'allocution d'Emmanuel Macron après les violences du 17 octobre)
- [4]BBC(Macron calls for calm in France and warns rioting must not escalate)
- [5]The Guardian(Macron criticises 'unbridled violence' after days of unrest and 2,000 arrests across France)
- [6]France 24('Like we had a war': France left reeling after nationwide violent protests)
- [7]The Guardian(Why are people protesting across Europe?)
- [8]franceinfo(A Limoges, 7 000 personnes se sont rassemblées pour une marche après l'incendie de l'hôtel de ville en marge de la mobilisation du 17 octobre)