PHP に重大な欠陥、国内外で政府機関や銀行がサイトやサービスを一時停止
2026年10月22日 06:39
ウェブサイトの開発に広く使われるプログラミング言語 PHP に、認証なしに外部からサーバー上でコードを実行される重大な欠陥が 2 件見つかり、開発チームは日本時間 21 日の深夜に修正版を公開した [1][2]。深刻度はどちらも 10 点満点の 9.2 と評価されており [3]、英国や欧州連合(EU)のサイバー当局がすぐに対処できない組織にはシステムをネットから切り離すよう促すなか、国内でも銀行や証券会社、鉄道会社がサイトやサービスを相次いで止めている [3][4][5]。
PHP はサーバーの側で動いてページを組み立てる言語で、WordPress や Drupal、ウィキペディアを支える MediaWiki もこれで書かれる [4][6]。欧州系の調査機関の集計では、サーバー側の言語が分かるサイトの 69.3% が PHP を使っており [7][8]、欠陥を見つけたセキュリティ企業の Wiz は、インターネットの 70% に関わる欠陥と位置づける [6]。
修正された欠陥の 1 つは、メモリー不足の処理が途中で割り込み、初期化しきれていないリクエストのデータを後片付けの処理が正しいものとして扱ってしまうもので、もう 1 つは、解放したメモリーに結びついた内部の状態が残り、同じワーカーが次のリクエストでそれを使ってしまうものだ [1]。開発チームはウェブのリクエストを受けるすべての PHP が危険にさらされるとし、なかでも Apache の mod_php では、アプリケーションのコードが動き出す前の段階で、認証のないリクエストによって攻撃が成り立つことを実証したと説明する [1]。GitHub に載せた勧告によれば、メモリーの上限などを既定の設定のままにした mod_php に対し、HTTP 越しに完全なコード実行まで確かめられた [9]。
8.5.12、8.4.27、8.3.36、8.2.35 の 4 つの修正版の告知には、どれにも同じ一文が添えてある [10]。
完全な回避策はなく、更新することだけが安全な選択である。
PHP(PHP 8.5.12 Released!)
更新の提供が終わった 8.1 以前は対象から外れたものの、深刻さを踏まえて 7.4、8.0、8.1 向けにも最小限の修正をソースコードで用意した [1]。すぐに更新できない場合に向けて設定の変更も示したが、それらは特定の攻撃の経路を狭めるだけで、PHP を安全な状態にはしないと念を押す [1]。
欠陥を見つけたのは Wiz とセキュリティ企業 Calif の研究者で、Wiz は 8 月 19 日に人工知能(AI)を使って最初の欠陥を見つけ、24 日に PHP のセキュリティチームへ報告したと明かした [6]。欠陥は一部が 10 年以上前にさかのぼる設計上の判断から生じており、攻撃として成り立つことを示すには人の研究者が現実にこなせる限界に近い複雑な手順を踏まなければならなかったが、最先端の AI モデルがその壁を大きく下げたと Wiz は振り返る [6]。BBC によると、Calif は PHP の開発団体とともに OpenAI の「Patch the Planet」という取り組みに加わり、AI の道具で欠陥を探していた [11]。今月下旬に修正とあわせて公表するはずが、20 日に詳しい情報が交流サイトに漏れ、発表を急ぐことになったという [11]。
各国の対応は 21 日のうちに広がり、フィンランドは政府の公開ウェブサービスを一時的に止め、オランダのサイバー当局は自らのサイトを閉じた [11]。米国家安全保障局(NSA)は更新できなければシステムをネットから外すよう X で呼びかけ、ウィキメディア財団が予防のためにいくつかのシステムを止めたことで、ウィキペディアの一部も見られなくなった [11]。英国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、すべての版が影響を受けうるとして PHP を使うシステムを洗い出すよう求め、とるべき手順の 1 つにこう書いている [4]。
一時的な緩和策を適用できない場合や、適用に時間がかかりすぎる場合は、完全に対処できるまでシステムをオフラインにすることを検討すべきである。
NCSC(Critical security issue affecting PHP)
EU のコンピューター緊急対応チーム(CERT-EU)は、修正の公開後に技術的な詳細が公の場で議論され、攻撃を試す実証コードも出回り始めたことから、攻撃者がすでに悪用している可能性が高まったとみる [3]。ネットの基盤を支える Cloudflare の最高技術責任者も、初期の攻撃が出てきていると明かし、新しい手口が見つかるたびに防御を更新しているという [11][12]。
国内では情報処理推進機構(IPA)が 21 日、修正版の公開に先立って準備を求める注意喚起を出し、サポートの切れた古い PHP を使い続けるサイトも見受けられるとして、攻撃者が極めて短い時間で攻撃に移るおそれに触れている [13]。国家サイバー統括室もパッチの適用など速やかな対応を求め、高市早苗首相は X に、対応が難しい場合はサイトを一時的に止めることもリスクを下げる有効な手の一つだと投稿した [7][8]。
全国銀行協会は銀行どうしの決済への影響は確認されていないとしたが、静岡銀行がネットバンキングを一時停止し、七十七銀行も予防のため一部のサービスを止めた [5]。みずほ銀行は臨時のメンテナンスに入り、大和証券は口座開設を含むウェブサイトでのサービスを、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券は本人確認などの手続きを見合わせている [5]。鉄道では京阪ホールディングスがホームページを止め、阪神電気鉄道も同じ措置をとる予定で、さくらインターネットやネットショップ作成サービスの BASE、全国の介護事業所の情報を載せる厚生労働省のサイトも、停止や緊急の保守に入った [5][8]。
ソフトウェア製品やネットワーク機器の内部に PHP が組み込まれていることもあり、利用者の側からは使われているかどうかが分からない場合がある [13]。IPA は、まず製品のマニュアルや開発元、提供元が出す情報を確かめるよう求めている [13]。
参考文献
- [1]PHP(Security advisory: Critical remote code execution vulnerabilities, update now)
- [2]産経ニュース(プログラミング言語「PHP」の修正パッチ配布始まる「重大な欠陥」に相次ぐ緊急メンテ)
- [3]CERT-EU(Critical Vulnerabilities in PHP)
- [4]NCSC(Critical security issue affecting PHP)
- [5]共同通信(銀行決済は影響確認されず PHP 欠陥、鉄道などで緊急措置)
- [6]Wiz(PHP2Shell: AI uncovers critical RCE vulnerabilities affecting 70% of the Internet)
- [7]共同通信(プログラム言語 PHP に重大欠陥 ウェブ 7 割で使用、攻撃の恐れ)
- [8]Kyodo News(Vulnerabilities found in widely used PHP programming language)
- [9]GitHub(RCE via OOM corruption · Advisory · php/php-src)
- [10]PHP(PHP 8.5.12 Released!)
- [11]BBC(Websites taken down worldwide as critical PHP cyber-security update issued)
- [12]The Verge(A critical PHP vulnerability may take websites down today)
- [13]IPA(【事前準備のお願い】PHP のセキュリティリリース公開予定について)