ヒトラーの山荘だったケールシュタインハウスが燃え、バイエルン州内相「廃墟のままにはしない」
2026年10月25日 15:59
ドイツ南部バイエルン州ベルヒテスガーデンの山上に立つ「ケールシュタインハウス」で、現地時間 23 日夜に火事があり、建物のほぼ全体が焼けた [1][2]。ナチスが 1938 年に完成させ、ヒトラーが外国の外交官らを迎えた建物で、英語圏では「イーグルズ・ネスト(ワシの巣)」の名で知られている [1][2]。
警察によると、火災報知器が鳴ったのは午後 9 時 15 分ごろで、消防が 9 時 50 分ごろに着いたときには、標高 1834 メートルの建物はすでに炎に包まれていた [2][3]。6 つの自治体の消防や赤十字、山岳救助隊など約 200 人が出動したが、狭く急な山道に阻まれ、雨はやがて今季初めての雪に変わって強い風も吹き、消防は夜のうちにいったん撤退せざるをえなかった [1][3][4]。火は 24 日朝になってもくすぶり続けたものの、建物の中に人はおらず、けが人は出ていない [1][2][3]。
最初に現場へ向かったパトカーや消防車の前に、ナンバープレートのない赤いオートバイが狭い山道を下ってきたため、警察は消防と協力して乗っていた男を取り押さえた [1][4]。トラウンシュタイン検察によると、男は 33 歳のドイツ人で、地域とのつながりはあるものの近くには住んでおらず、捕まったときには片手にけがをしていた [1][3][4]。
ライナー・フィーツェ検察官は 24 日の記者会見で、専門家による簡易な精神鑑定で精神疾患をうかがわせる具体的な手がかりが見つかったと述べ、少なくとも責任能力は限られているとみるほかないとの考えを示した [1]。男はローゼンハイムの裁判官のもとに連れて行かれ、裁判所の命令で精神科の病院に収容されている [1][4]。政治的な動機の有無も調べるが、捜査は始まったばかりで、ほかの人物が関わったことをうかがわせる手がかりはないという [1][2]。
損害は数百万ユーロにのぼるとみられる [4]。州刑事局の捜査員が現場に入ったものの、崩れ落ちる部材の危険があるため作業は少しずつしか進められず、出火の原因がわかるまでには数日から数週間かかる見通しである [4]。建物を所有するバイエルン州のヨアヒム・ヘルマン内相は、毎年何万人もが訪れる歴史的な建物を「廃墟のままにはしない」と述べて再建する考えを示し、記憶をつなぐ取り組みを続けることが大切だとも語った [1][2][3]。
建物の設計はナチ党の幹部マルティン・ボルマンが建築家ローデリヒ・フィックに任せたもので、1937 年から 1938 年にかけての工事では、山の中にエレベーターの立て坑を掘る作業で 12 人が命を落とした [5]。訪れる人は全長 6.5 キロの山道を専用のバスで上り、岩の中のトンネルを抜けて、高さ 124 メートルを昇るエレベーターで建物に入る [5][6]。1938 年 10 月にヒトラーを訪ねたフランス大使アンドレ・フランソワ=ポンセが「ワシの巣」と呼んだのが英語名の由来とされるが、ヒトラー自身がここに来たのは 10 回ほどだったという [5]。
1939 年のヒトラーの 50 歳の誕生日に贈られたという話は広く知られているが、ケールシュタインハウスの公式サイトはこれを否定している [6]。建物は 1952 年から山上の食堂として営業し、歴史を伝える展示も置かれて、今季は 11 月 8 日まで開く予定だった [1][6]。公式サイトは火事を受けて当面休業すると告知しており、建物の説明には次の一文がある [6]。
山のレストランとして使われているこの建物は、ベルヒテスガーデンの山々とザルツブルク周辺を見渡す比類のない眺めを与える一方で、人間を蔑んだナチス独裁の深淵を思い起こさせる戒めでもある。
Kehlsteinhaus(Ausflugsziel Kehlsteinhaus)
ヒトラーにゆかりのある建物をどう扱うかはドイツやオーストリアで議論が続いており、ベルリン当局は 6 月にヒトラーが使った地下壕の一つを取り壊して住宅や事務所を建てると発表し、オーストリアは 7 月にヒトラーが生まれたブラウナウの家を警察署に改めた [2]。山荘へのバスの切符には近くの「オーバーザルツベルク資料館」の入館料も含まれており、この資料館は現代史研究所の監修のもとで、ナチスの支配と犯罪の歴史を伝えている [6][7]。
参考文献
- [1]tagesschau(Nazi-Bau: Kehlsteinhaus am Obersalzberg durch Brand weitgehend zerstört)
- [2]BBC(Man arrested after fire at Hitler's mountaintop Eagle's Nest retreat)
- [3]The Guardian(Suspect arrested over fire at Hitler’s ‘Eagle’s Nest’ retreat in Bavaria)
- [4]Berchtesgadener Anzeiger(Brandstiftung am Kehlsteinhaus? - Dringend Tatverdächtiger in psychiatrischem Krankenhaus untergebracht - Millionenschaden)
- [5]Wikipedia(Kehlsteinhaus)
- [6]Kehlsteinhaus(Ausflugsziel Kehlsteinhaus)
- [7]Dokumentation Obersalzberg(Dokumentation Obersalzberg Ausstellung und historische Bunkeranlage in Berchtesgaden)